こういうことをたまに思うんだけど、思うだけを繰り返す人生なんだよなぁ……

 ハイエースの後部座席で揺られながら、僕は涙が溢れそうだった。仕事現場への移動中にスマホでこの記事を読みながら僕は、なぜ涙が出てきたのか考えた。たぶん自分が彼に比べて何も努力していないという不甲斐なさに涙が出たのだと思う。

 声優、佐々木望を知ったのはボーグマンあたりだっただろうか。サムライトルーパーではしっかりとその存在を知っていた。そういえばコンパイラのドラマCDでも聴いていたな。世間でひろく認知されている幽遊白書のイメージは自分にはなかったりする。そのころの自分は小学生から中学生だった。どっぷりとしたオタクではないけれど、声優という存在に興味をもつくらいにはアニメや漫画やゲームを楽しんでいた。今の自分にとってはあのころの有名人。あの人は今くらいの存在になっていた人。

 そんな人が突然ホッテントリに表示されていて、東大を卒業したとかなんとか。しかも40代も半ばからのチャレンジ。すごいと、とにかく感嘆した。そして今40代の自分もがんばりたいと感化された。じゃあ何をがんばる? 東大を目指す? それなら自分は東大に行って何をしたいの? ……わからない。学歴にはあこがれるけど、そのあこがれだけで勉強を続けられる気がしない。それはこれまでの自分の人生を振り返ってみてもそう思う。これまでにあこがれを追いかけてやってみたこと。それらはなにひとつ結果を残せていなかった。情けないことに。

 やりたいこと、成し遂げたいことがないわけではないのだ。いくつかある。恥ずかしくて人には言えないけど。……いや、待てよ。やりたいことを言うのになんで恥ずかしいと思うのか。べつに堂々と言えばいいじゃないか。なぜ恥ずかしがるのか。自分の胸に聞いてみた。恥ずかしがるのは、自分が本気でそれに取り組もうとしていないからではないかと、ふと思った。たぶん、ちょっとかじって途中で投げ出してしまうことが自分でわかってるのだ。やり遂げるそこまでの覚悟がないんだ。だから恥ずかしい。本気でないんだ。だから言えないだけで、恥ずかしいというのは途中で自分が逃げ出すとわかっているからなんじゃないか。情けない。ああ、なんで僕はこうも、情けない人間なんだろう。何かに打ち込みたいという欲求はあるのに。……ああそうか、何に打ち込むか、それがわかってないんだ。打ち込めるものがないんだ。それを探さなければ。……いまさらかよ。そう思うけど、そんなこといって腐しても何もはじまらないし進歩はない。とにかく今からでもはじめなきゃ。自分が打ち込めるものを探すことを。

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